電気工事士の仕事と未経験からの入職ルート
電気工事士は、建物の配線やコンセント、照明、分電盤などを取り付ける国家資格の職種です。建設業の中でも「資格がないとできない作業」がはっきり決まっているため、資格を取れば仕事と収入が安定しやすいのが特徴です。まずは仕事の全体像と、未経験者がどこから入るかを整理します。
第一種と第二種の違い
電気工事士には「第一種」と「第二種」があります。未経験者が最初に目指すのは第二種です。違いをざっくりまとめると次のとおりです。
- 第二種:一般住宅や小規模な店舗・事務所など、身近な建物の電気工事ができる。受験資格なし、誰でも受験可能
- 第一種:第二種の範囲に加え、ビルや工場など中規模の施設の工事もできる。試験合格後、免状の交付には一定の実務経験が必要
つまり「第二種で現場に入り、経験を積みながら第一種を目指す」のが王道ルートです。第二種だけでも住宅系の仕事は十分にこなせるため、まずは第二種に集中しましょう。実務経験の要件は改正されることがあるため、第一種を目指す段階で電気技術者試験センターや都道府県の最新情報を確認してください。
電気工事の主な現場の種類
同じ電気工事士でも、働く現場によって仕事の中身や体力負担がかなり違います。代表的なのは次の4つです。
- 住宅・リフォーム系:新築戸建ての配線、照明・コンセント増設、エアコン専用回路など。1日で完結する仕事も多い
- ビル・商業施設系(内線工事):オフィスビルや店舗の照明、幹線、分電盤の工事。工期が長く大人数で動く
- 工場・プラント系:機械設備への配線、動力設備の工事。第一種があると活躍の幅が広がる
- 弱電・通信系:LAN配線、防犯カメラ、インターホンなど。体力負担は比較的軽め
未経験者が入りやすいのは住宅系とビル系です。求人を見るときは「どの現場が中心か」を必ず確認しましょう。
資格を先に取るか、入職後に取るか
未経験からのルートは大きく3つあります。
- 資格を取ってから応募:採用で有利になり、初任給に資格手当がつくこともある。独学で2〜4ヶ月が目安
- 無資格で入職し、会社負担で取得:助手として働きながら勉強する。受験費用や工具代を会社が出してくれる例も多い
- 職業訓練校で学ぶ:電気系の訓練コースなら、資格対策と実技練習をまとめて受けられる
無資格でも、資材運び・穴あけの補助・清掃・器具の箱出しなど「電線をつながない作業」は担当できます。ただし配線の接続などは資格が必要なため、無資格のままでは任される仕事に限界があります。入職後に取る場合も、1年以内の取得を目標にするのが現実的です。
電気工事のきつさのリアル
電気工事は鳶や解体に比べると重量物が少なく、体力面では「中くらい」と言われます。とはいえ、楽な仕事というわけではありません。
- 天井裏や床下での配線は、夏場は40℃近くになることもある
- 脚立の上で上を向く作業が続き、首・肩がこりやすい
- 竣工前は工期に追われ、残業が月20〜40時間に増えることもある
- 感電のリスクがあるため、手順を守る集中力が常に求められる
一方で「覚えた知識がそのまま腕になる」「自宅の電気トラブルも自分で直せる」というやりがいがあります。体力よりも、丁寧さと覚える意欲が問われる仕事です。
第二種電気工事士の取得費用はいくら?内訳を公開
第二種電気工事士の取得にかかる費用は、独学の場合で総額4〜6万円程度が目安です。何にいくらかかるのかを項目別に見ていきます。金額は2026年時点の一般的な相場で、受験手数料などは改定されることがあるため申込前に公式情報を確認してください。
受験手数料と免状交付手数料
試験は電気技術者試験センターが実施しており、学科試験と技能試験の両方に合格する必要があります。受験手数料は学科・技能をまとめて1回分として支払う仕組みです。
- 受験手数料:9,000円台(インターネット申込のほうが書面申込よりやや安い)
- 免状交付手数料:5,000円前後(合格後に都道府県へ申請。金額は都道府県で異なる)
- 証明写真代:800〜1,000円程度
合計すると、試験と免状だけで1万5,000円前後です。なお、学科に合格して技能で落ちた場合は、次回の試験で学科が免除される制度があります。その場合も受験手数料は再度かかるので、できれば一発合格を狙いたいところです。
テキスト・問題集などの教材費
独学の場合、必要な教材は次のとおりです。
- 学科のテキスト:2,000〜3,000円
- 過去問題集:1,500〜2,500円
- 技能試験の解説本:2,000〜3,000円
合計で5,000〜8,000円程度です。最近は無料の解説動画も充実しており、特に技能試験は動画で手元の動きを見ながら練習するのが効率的です。通信講座を使う場合は2〜5万円ほど追加になりますが、独学でも十分合格できるため、まずは書籍と動画で始めて、つまずいたら講座を検討する順番がおすすめです。
技能試験の工具・練習材料費
費用の中で一番大きいのが技能試験の準備です。技能試験は実際に電線を切って器具をつなぎ、制限時間内に作品を完成させる実技試験なので、工具と練習用の材料が必要です。
- 工具セット:1万〜1万8,000円(ペンチ、ドライバー、ワイヤーストリッパー、圧着ペンチなど)
- 練習用材料(電線・器具)1回分:1万2,000〜1万8,000円
- 練習用材料2回分セット:2万〜3万円
工具は入職後もそのまま現場で使えるため、無駄にはなりません。材料は1回分だと練習量が足りないことが多く、2回分セットを買う人が多数派です。会社負担で受験する場合は、工具や材料を支給してもらえることもあるので、入職前に確認しておきましょう。
総額シミュレーション
パターン別の総額目安をまとめます。
- 最安パターン(独学・材料1回分):約4万円
- 標準パターン(独学・材料2回分):約5万〜5万5,000円
- 手厚いパターン(通信講座利用):約7万〜10万円
- 会社負担パターン:自己負担0〜1万円程度(免状代のみ自腹など)
資格手当は月3,000〜1万円が相場なので、自費で5万円かけても半年〜1年ほどで回収できる計算です。未経験から建設業に入る投資としては、かなり効率の良い部類と言えます。
第二種電気工事士の勉強期間とスケジュール
電気の知識ゼロの人でも、学科と技能を合わせて100〜150時間ほどの勉強で合格ラインに届くのが一般的です。働きながらなら2〜4ヶ月が目安になります。試験ごとの内容とスケジュールを見ていきましょう。
学科試験の内容と必要な勉強時間
学科試験は4択のマークシート形式で、50問中60点前後が合格の目安です。パソコンで受けるCBT方式と、会場で受ける筆記方式から選べます。出題範囲は次のとおりです。
- 電気の基礎理論:電流・電圧・抵抗の計算など
- 配線図:図面記号の読み取り、必要な電線本数の判断
- 器具・工具の名前:写真を見て名称や用途を答える
- 法令・安全:工事のルールや検査方法
勉強時間の目安は50〜100時間です。計算問題が苦手な人は、計算をある程度捨てて暗記問題と配線図で点を稼ぐ戦略でも合格できます。過去問の類似問題が多く出るため、過去問を5〜10年分繰り返すのが最も効率的です。合格率は例年50〜60%前後です。
技能試験の内容と必要な練習時間
技能試験は、配線図をもとに40分で作品を完成させる実技です。出題候補は毎年事前に13問公表されるため、全問を練習しておけば本番で慌てずに済みます。
- 電線の被覆(外側のビニール)を正しい長さでむく
- リングスリーブや差込形コネクタで電線同士をつなぐ
- コンセントやスイッチなどの器具に電線を取り付ける
- 配線図どおりに電線の色を間違えずに接続する
練習時間の目安は20〜50時間です。合格率は例年60〜70%台と学科より高めですが、「欠陥」と呼ばれるミスが1つでもあると不合格になる厳しさがあります。スピードより正確さを優先し、13問すべてを最低1〜2回は完成させることが合格の近道です。
働きながら3ヶ月で合格するスケジュール例
平日1時間、休日3時間を確保できる人向けのスケジュール例です。
- 1ヶ月目(学科・基礎固め):テキストを1周し、配線図記号と器具名を暗記。計算は基本だけ押さえる
- 2ヶ月目(学科・過去問演習):過去問を繰り返し、正答率7割以上を目指す。学科試験を受験
- 3ヶ月目(技能練習):工具と材料を用意し、候補問題13問を順番に練習。最後の1〜2週間は時間を計って本番形式で
学科試験と技能試験の間は1〜2ヶ月ほど空くことが多いので、学科が終わったらすぐ技能練習に切り替えるのがポイントです。試験は上期・下期の年2回あり、申込期間を逃すと半年待つことになるため、まず受験日から逆算して計画を立てましょう。
未経験者がつまずきやすいポイント
未経験者が落ちやすいパターンは決まっています。事前に知っておくだけで対策できます。
- 計算問題に時間をかけすぎる:配点は一部なので、深追いせず暗記問題で確実に点を取る
- 技能の練習を後回しにする:学科合格後に慌てて始め、練習不足で落ちる人が多い
- 複線図が書けない:配線図を実際の電線のつながりに書き直す「複線図」は技能の要。毎日1枚書く習慣をつける
- 本番で時間が足りない:練習段階で30分以内に完成できるよう仕上げておく
現場で働いている人は、先輩に技能の練習を見てもらえることも大きな強みです。「わからないことを聞ける環境」は合格率を大きく左右します。
電気工事士の入職後の年収推移
電気工事士は資格と経験の積み上げが年収に反映されやすい職種です。ここでは、未経験で入職した場合の年収の伸び方を段階別に紹介します。地域や会社規模によって差はありますが、一般的な目安として参考にしてください。
1年目:見習い期間の給与
未経験1年目は、先輩について作業を覚える見習い期間です。給与の目安は次のとおりです。
- 月給制:月給18万〜23万円(手取り15万〜19万円程度)
- 日当制:日当9,000〜1万3,000円
- 資格手当:第二種取得で月3,000〜1万円が加算される会社が多い
- 年収目安:260万〜330万円
1年目は脚立の運搬、配管の準備、器具の取り付け補助などが中心です。第二種を持っていれば、早い段階から照明やコンセントの接続を任されるため、成長スピードも昇給も早くなります。
3〜5年目:一人で現場を任される段階
3年目あたりから、住宅1軒分の配線を一人で任されたり、後輩を指導したりする立場になります。
- 月給制:月給25万〜32万円
- 日当制:日当1万4,000〜1万8,000円
- 年収目安:350万〜480万円
この時期に差がつくのが「段取り力」です。必要な材料を事前に拾い出し、他の職人との作業順を調整できる人は、職長候補として評価されやすくなります。第一種電気工事士の試験に挑戦する人が増えるのもこの時期です。
第一種・施工管理を取った後のキャリア
5年目以降は、資格によってキャリアの選択肢が広がります。
- 第一種電気工事士:ビルや工場の工事に携われるようになり、資格手当が月5,000〜2万円程度に
- 電気工事施工管理技士:工程や安全を管理する立場。施工管理職として年収450万〜650万円も視野に入る
- 職長・班長:現場のまとめ役として手当がつき、年収450万〜550万円程度
大規模な現場では、一定規模以上の工事に主任技術者や監理技術者を置くことが建設業法で決められています。たとえば重要な建設工事で請負代金4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の場合は現場への専任が必要になるなど、資格者の需要は大きく、施工管理の資格は年収アップに直結しやすい武器になります。
独立・一人親方になった場合
10年前後の経験を積むと、独立して一人親方や電気工事会社を立ち上げる人も出てきます。
- 一人親方の年収目安:500万〜800万円(売上から材料費・経費を引いた額)
- 従業員を雇う社長:受注次第で1,000万円以上も可能
- 必要なもの:取引先とのつながり、工具・車両、電気工事業の登録手続き
ただし独立すると、仕事の確保、確定申告、保険の手続きもすべて自分の責任になります。収入が上がる一方で、仕事が途切れるリスクもあります。会社員として腕と人脈を十分に育ててから判断するのが安全です。
まとめ
第二種電気工事士は未経験者の最初の一歩に最適
第二種電気工事士は受験資格がなく、費用は5万円前後、勉強期間は2〜4ヶ月が目安です。合格率も学科50〜60%前後、技能60〜70%台と、きちんと準備すれば十分に手が届く資格です。電気の知識ゼロでも、過去問の反復と技能の練習量で合格できます。建設業の中でも「資格が仕事に直結する」職種なので、未経験から安定したキャリアを築きたい人に向いています。
年収は資格と経験で段階的に上がる
1年目は年収260万〜330万円ほどですが、3〜5年目で350万〜480万円、第一種や施工管理の資格を取れば450万〜650万円、独立すれば500万〜800万円も目指せます。電気工事は、住宅・ビル・工場など需要が途切れにくく、経験を積むほど収入に反映されやすい仕事です。年齢よりも「何を身につけたか」が評価されるのも大きな魅力です。
今日からできる3つの行動
迷っているなら、まずは小さく動いてみましょう。
- 電気技術者試験センターのサイトで次回の試験日程と申込期間を確認する
- 書店で学科テキストを1冊手に取り、自分に続けられそうか確かめる
- 「資格取得支援あり」「未経験歓迎」の電気工事会社の求人を3社ほど見比べる
一歩目は、試験日を決めることです。ゴールが決まれば、勉強も転職準備も自然と動き出します。