溶接工とは?建設現場での仕事内容と1日の流れ
建設業の溶接工が働く3つの職場
溶接工とは、金属どうしを熱で溶かしてつなぐ職人です。同じ溶接工でも、働く場所によって仕事の中身が大きく変わります。建設業でよくある職場は次の3つです。
- 鉄骨工場(ファブ):ビルや倉庫の柱・梁を工場の中で組み立てて溶接します。屋根の下で作業でき、天候の影響をほとんど受けません。未経験者が最初に入りやすい職場です。
- 鉄骨の現場溶接:建設中の建物の上で、柱どうしの継ぎ目を溶接します。高所作業が多く難易度も高いぶん、日当は最も高い部類に入ります。
- 配管・設備溶接:工場やプラント、ビルの設備で、水やガスの配管をつなぎます。ステンレスの溶接などで精密さが求められます。
求人票に「溶接工」とだけ書かれていても、どの職場なのかで働き方は別物です。応募前に「工場勤務か、現場に出るか」を必ず確認しましょう。体力に不安がある人や高所が苦手な人は、工場勤務から始めると安心です。
主な溶接方法は3種類
溶接にはいくつかの方法があり、それぞれ使う機械や難しさが違います。建設業でよく使われるのは次の3つです。
- 被覆アーク溶接(手溶接):棒状の溶接棒を使う、昔からある方法です。屋外の風にも強く、現場で今も使われています。
- 半自動溶接(CO2・MAG溶接):ワイヤーが自動で送られてくる方法で、鉄骨工場の主力です。比較的覚えやすく、未経験者が最初に習うことが多い方法です。
- TIG溶接:仕上がりがきれいで、ステンレスやアルミの溶接に向いています。両手を別々に動かすため難しく、習得に時間がかかります。
未経験者は、まず半自動溶接で基本を身につけるのが一般的です。慣れてきたら手溶接やTIG溶接に広げていくと、対応できる仕事が増えて収入も上がりやすくなります。
鉄骨工場で働く溶接工の1日
鉄骨工場で働く場合の、典型的な1日の流れを紹介します。
- 8:00 朝礼・ラジオ体操・その日の段取り確認
- 8:15〜10:00 図面を見ながら部材を並べ、仮止めの溶接
- 10:00〜10:15 小休憩
- 10:15〜12:00 本溶接(実際に部材をつなぐ作業)
- 13:00〜15:00 溶接の続き、仕上げ(はみ出た部分を削る作業)
- 15:00〜15:15 小休憩
- 15:15〜17:00 検査の準備・片付け・翌日の確認
勤務時間は8:00〜17:00が多く、繁忙期は1日1〜2時間の残業が入ります。見習いのうちは、溶接そのものより部材運びや掃除、仕上げ作業が中心です。半年ほどで簡単な溶接を任されるようになるのが一般的な流れです。
正直に伝えたい「きつい点」
溶接は手に職がつく反面、次のようなきつさがあります。入職前に知っておきましょう。
- 暑さ:夏でも長袖の革の前掛けや手袋をつけるため、作業場の体感温度はかなり上がります。
- 火花(スパッタ):飛び散る火花で作業着に穴が開いたり、小さなやけどをしたりします。
- 目への負担:溶接の光は強く、遮光面を使わないと目を痛めます。
- 煙(ヒューム):溶接で出る金属の煙は健康に影響するため、防じんマスクの着用が欠かせません。
- 姿勢:しゃがんだり、上を向いたりした姿勢を長時間続けることがあります。
近年はヒューム対策の規制が強化され、換気設備や電動ファン付きマスクを用意する会社が増えています。面接では「マスクや保護具は会社支給か」を確認すると、安全への姿勢がわかります。
溶接工の年収・日当の実態【2026年版】
未経験1年目の給与目安
未経験で入った1年目の給与は、次の範囲が目安です。
- 月給制(鉄骨工場など):月給20万〜25万円、手取りで16万〜20万円前後
- 日当制:日当1万〜1万4,000円、月22日働いて月収22万〜30万円
- 年収:280万〜350万円
1年目は「溶接ができる人」ではなく「溶接を覚えている人」として扱われるため、給与は控えめです。ただし溶接工は、資格を取るたびに給与が上がりやすい職種です。JIS溶接の資格を1つ取ると、月1万〜2万円ほど上がる会社が多くなります。会社によっては資格手当が別に支給されるため、求人票の手当欄も確認しましょう。
資格・経験別の日当と年収
経験と資格が増えると、収入は次のように上がっていきます。
- 経験2〜3年・JIS基本級あり:日当1万4,000〜1万8,000円、年収350万〜450万円
- 経験3〜5年・JIS専門級あり:日当1万8,000〜2万3,000円、年収420万〜550万円
- 鉄骨の現場溶接(上位資格あり):日当2万5,000〜3万5,000円、年収550万〜700万円
- 独立・一人親方:日当3万円以上も可能ですが、機械代や保険料は自分で負担します
数字には地域差があり、都市部や大型の鉄骨工事が多いエリアほど高くなります。また、日当制は雨や工事の止まる時期に収入が減るため、年収は「日当×稼働日数」で考えることが大切です。
稼げる溶接工になる3つの条件
同じ年数働いても、収入に差がつくのは次の3点です。
- 扱える溶接方法が多い:半自動だけでなく、手溶接やTIG溶接もできると、呼ばれる現場が増えます。
- 難しい姿勢で溶接できる:床に置いた部材を溶接する「下向き」より、壁や天井に向かって溶接する「立向き」「上向き」のほうが難しく、評価が高くなります。
- 検査に合格し続ける:溶接部分は超音波などで検査されます。不合格が少ない職人は信頼され、単価の高い仕事を任されます。
溶接は腕前が数字や検査結果ではっきり出る仕事です。人付き合いが苦手でも、技術で評価されやすいのは大きな魅力といえます。
溶接工に必要な資格と取る順番
最初に受ける「アーク溶接特別教育」
アーク溶接の作業をするには、法律で定められた「特別教育」を受ける必要があります。これは試験ではなく講習で、受ければ修了できます。
- 内容:溶接の仕組み、感電や火災を防ぐ知識、実技の練習
- 期間:2〜3日の講習が一般的
- 費用:1万〜2万円前後(会社負担の場合も多い)
- 受講場所:労働基準協会、民間の講習機関、会社内での実施など
多くの会社では、入社後すぐにこの講習を受けさせてくれます。ガスを使った溶接や切断をする場合は「ガス溶接技能講習」も必要になります。どちらも入職前に自分で取っておくと、未経験でも採用で有利になりやすいです。
メインの資格「JIS溶接技能者評価試験」
溶接工として腕前を証明する代表的な資格が、日本溶接協会の「JIS溶接技能者評価試験」です。学科試験と、実際に溶接して曲げて強さを確かめる実技試験があります。
- 基本級:板を床に置いた状態(下向き)で溶接する試験。最初に取る資格です。
- 専門級:立向き・横向き・上向きなど難しい姿勢で溶接する試験。現場で評価される資格です。
- 種類:手溶接、半自動溶接、TIG溶接、ステンレス溶接など、方法ごとに分かれています。
- 受験料:1種目あたり2万〜4万円程度(種目や地域で異なるため、各地の溶接協会に確認)
実技は練習量がそのまま結果に出る試験です。基本級は、毎日練習すれば未経験から3〜6ヶ月で合格を目指せます。
鉄骨の現場で稼ぐための上位資格
JISの専門級を取ったあと、さらに稼ぎたい人が目指すのが鉄骨向けの上位資格です。
- AW検定(建築鉄骨溶接技量検定):ビルの鉄骨溶接、特に現場溶接で求められる資格です。合格率は低めで、経験3〜5年以上の職人が受けることが多い難関です。
- 建築鉄骨製品検査技術者:溶接の品質をチェックする側の資格で、将来の検査職への道が開けます。
- 溶接管理技術者:溶接作業全体を管理する立場の資格です。現場を離れて管理職を目指す人に向いています。
上位資格を持つ現場溶接工は人手不足が続いており、日当3万円を超える例も珍しくありません。体力が落ちてきたら、検査や管理の資格に移るというキャリアも描けます。
資格は取って終わりではない
JIS溶接の資格には有効期限があり、腕前を保っているかを定期的に確認される仕組みです。
- 1年ごと:溶接の仕事を続けていることを確認する手続き(サーベイランス)
- 3年ごと:もう一度実技試験を受ける再評価
- 費用:手続きや再評価ごとに数千円〜数万円かかる
手続きを忘れると資格が失効し、取り直しになります。会社に勤めている場合は会社がまとめて管理してくれることが多いですが、日当制や一人親方は自分で期限を管理する必要があります。資格の数が増えるほど更新の手間も増えるため、スマホのカレンダーなどで管理しておくと安心です。
未経験から溶接技能者になる費用と期間【3ルート比較】
ルート1:会社で働きながら覚える
最も一般的で、お金をかけずに始められる方法です。鉄骨工場や溶接を行う会社に未経験で入社し、仕事をしながら技術を身につけます。
- 費用:0円〜5万円程度(講習・受験料を会社が負担する場合が多い)
- 期間:JIS基本級まで6ヶ月〜1年、専門級まで1〜3年
- メリット:給料をもらいながら学べる、実際の仕事で経験が積める
- デメリット:最初は雑用が中心で、溶接の練習時間が少ない会社もある
面接では「資格取得の費用は会社が出すか」「練習用の材料や時間を用意してくれるか」を確認しましょう。昼休みや終業後に練習させてくれる会社は、上達が早くなります。
ルート2:職業訓練校で学ぶ
ハローワーク経由で受けられる公共職業訓練には、溶接を学べるコースがあります。離職中の人に向いた方法です。
- 費用:授業料は原則無料(教科書代・作業服代などで数万円)
- 期間:3〜6ヶ月のコースが一般的
- メリット:毎日溶接の練習ができ、在学中にJIS基本級を受けられることが多い
- デメリット:その間の収入がない(条件を満たせば失業給付を受けながら通える)
訓練校の溶接コースは地元の鉄骨工場とのつながりが強く、修了後の就職先を紹介してもらいやすいのも利点です。募集時期や定員はコースごとに違うため、近くのハローワークで早めに確認しましょう。
ルート3:民間の溶接スクールに通う
働きながら短期間で資格を取りたい人には、民間の溶接スクールや講習会という選択肢もあります。
- 費用:10万〜30万円程度(受験料込みのコースもある)
- 期間:数日〜2ヶ月程度の短期集中型が多い
- メリット:土日や夜間のコースがあり、今の仕事を続けながら学べる
- デメリット:費用が高い、短期間では現場で通用する腕前までは届きにくい
スクールで資格を取っても、現場では「実務経験」が重視されます。スクールは就職を有利にするための準備と考え、最終的には会社で経験を積むつもりで選ぶのが現実的です。
3ルートの比較と自分に合う選び方
3つのルートを比べると、次のようになります。
- 今すぐ収入が必要な人:ルート1(会社で働きながら)。費用ほぼ0円、基本級まで6ヶ月〜1年
- 離職中で基礎をしっかり学びたい人:ルート2(職業訓練校)。費用数万円、3〜6ヶ月
- 今の仕事を続けながら準備したい人:ルート3(民間スクール)。費用10万〜30万円、数日〜2ヶ月
どのルートでも、自分で用意したい装備があります。溶接用の革手袋、前掛け、安全靴、防じんマスクなどで、合計1万〜3万円が目安です。遮光面や溶接機は会社が用意するのが一般的です。トータルで見ると、会社で働きながら覚える場合は、5万円以内で溶接技能者への一歩を踏み出せます。
まとめ
溶接工は資格で収入が上がる「手に職」の仕事
溶接工は、建設業の中でも技術がそのまま評価と収入につながる職種です。未経験1年目は年収280万〜350万円と控えめですが、JIS溶接の資格を積み重ねると年収400万〜550万円が見えてきます。鉄骨の現場溶接で上位資格を持てば、日当3万円を超えることもあります。人手不足が続く分野なので、腕を磨けば長く必要とされる仕事です。
- 職場は「鉄骨工場」「現場溶接」「配管溶接」の3つ
- 未経験は半自動溶接から始めるのが一般的
- 資格を1つ取るごとに月1万〜2万円上がる会社が多い
最初の一歩は「特別教育」と「JIS基本級」
資格は、アーク溶接特別教育、JIS基本級、JIS専門級、上位資格の順に進むのが王道です。特別教育は2〜3日の講習で修了でき、基本級は毎日練習すれば3〜6ヶ月で合格を目指せます。いきなり難しい資格を狙う必要はありません。まずは基本級を1つ取ることを目標にすれば、自分の成長を実感しながら続けられます。
- 特別教育:費用1万〜2万円前後、会社負担も多い
- JIS受験料:1種目2万〜4万円程度
- 資格は1年ごと・3年ごとの更新が必要
不安な人は「工場勤務×会社負担」から始めよう
暑さや火花、煙などのきつさはありますが、保護具や換気設備の整った会社を選べば負担は大きく減らせます。体力や高所に不安がある人は、屋内で天候に左右されない鉄骨工場から始めるのがおすすめです。資格費用を会社が負担してくれる職場なら、自己負担5万円以内で溶接技能者を目指せます。まずは求人票で「資格取得支援」「保護具支給」の有無をチェックすることから始めてみてください。
- 応募前に「工場勤務か現場か」を確認する
- 面接で資格費用と保護具の負担を確認する
- 離職中なら職業訓練校の溶接コースも検討する