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一人親方の確定申告で「専従者控除」を使える条件と手続き【2026年版】家族への給与払いで節税する実務手順を完全解説

「妻に手伝ってもらっているのに、給与として経費にできていない」という一人親方は少なくありません。青色申告の専従者給与・白色申告の専従者控除を正しく使えば、年間数十万〜100万円超の節税も現実的です。この記事では2026年版として、使える条件・届出手続き・よくある失敗まで実務レベルで完全解説します。

専従者控除・専従者給与とは何か:一人親方が知っておくべき基本

建設業の一人親方が家族に現場の書類整理・請求書作成・電話対応などを手伝ってもらっている場合、その労働に対して「家族だから無償」にしていると、節税の大きなチャンスを逃しています。配偶者や親族を「事業専従者」として届け出ることで、その給与を事業の経費として計上できる制度が「青色事業専従者給与」と「事業専従者控除(白色申告)」です。

一般的に、配偶者へ給与を払っても、他の所得者と同様に経費にできるわけではありません。通常の雇用と違い、家族への給与は税法上の「生計を一にする親族」への支払いとなるため、特別なルールが存在します。このルールを正しく理解せずに確定申告すると、税務調査で否認されるリスクもあるため、しっかり押さえておく必要があります。

青色申告と白色申告で制度が異なる

専従者に関する制度は、確定申告の方法によって大きく2種類に分かれます。

  • 青色申告の場合:青色事業専従者給与…事前に届出書を提出することで、実際に支払った給与の全額を経費(給与賃金)として計上できる
  • 白色申告の場合:事業専従者控除…届出不要だが、控除額に上限がある(配偶者は86万円、その他の親族は50万円)

青色申告のほうが節税効果は圧倒的に高く、妻に月15万円(年180万円)を給与として支払えば、その全額を経費にできます。一方、白色申告の専従者控除は最大86万円が上限です。すでに青色申告65万円控除を使っている一人親方であれば、専従者給与も合わせることでさらに節税幅が広がります。

「生計を一にする」とはどういう意味か

「生計を一にする」とは、簡単に言えば「同じ財布で生活している家族」のことです。同居している配偶者・子ども・親などは原則として生計を一にするとみなされます。別居していても、仕送りをしている親や子どもも該当することがあります。逆に、同居していても生活費を完全に別にしている場合は、生計を一にしないとみなされることもあります。建設業の一人親方の場合、最も多いケースは「自宅兼事務所で経理・書類整理を手伝っている配偶者」です。

青色事業専従者給与を使うための3つの条件

青色事業専従者給与を経費として認めてもらうには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。これを一つでも欠くと、税務調査で否認されるリスクがあるため、注意が必要です。

条件①:「青色申告承認申請書」と「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出

まず大前提として、青色申告をしていることが必要です。青色申告をするには、開業から2か月以内(既に開業している場合はその年の3月15日まで)に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。

さらに、専従者給与を経費にするには別途「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しなければなりません。この届出書は、専従者に給与を支払い始める年の3月15日まで(その年の1月16日以降に開業した場合は開業から2か月以内)に所轄の税務署へ提出する必要があります。届出なしに給与を支払っても、経費として認められません。届出書には、専従者の氏名・続柄・給与額・支払日・仕事の内容などを記載します。

なお、給与額を変更したい場合は「変更届出書」を提出するか、「遅滞なく」変更する旨を届け出る必要があります。実務上は、一度届け出た金額を超えた給与は経費として認められないため、最初から少し余裕を持った金額で届け出ておくと安心です。

条件②:「もっぱらその事業に従事している」こと

専従者として認められるには、年間を通じてその事業に「専ら(もっぱら)」従事していることが必要です。具体的には、年間のうち6か月を超えてその事業に従事していることが条件となります(事業の従事期間が6か月未満の場合は、その従事割合が1/2を超えていること)。

また、専従者本人が他に給与所得がある場合や、他の事業を持っている場合は「専ら従事している」とは認められません。たとえば、妻が週4日パートに出ていて残りの時間だけ一人親方の事務を手伝っている、というケースでは専従者とは認められない可能性が高くなります。一方、妻が完全に専業で事務・経理・書類作成をこなしている場合は問題ありません。

注意点として、15歳未満の親族は専従者として認められません。また、学生も原則として認められませんが、夜間学校に通うなど昼間は事業に従事できる実態があれば認められる場合もあります。

条件③:給与額が「労務の対価として相当な金額」であること

専従者給与は「仕事の内容・量に見合った金額」でなければなりません。実際にしている業務の内容と、市場で同じ仕事をした場合の相場を踏まえて設定する必要があります。一人親方の妻が担う業務として典型的なものは以下のとおりです。

  • 請求書・領収書の整理・記帳(月8〜15時間程度)
  • 元請けへの書類提出・電話対応(月5〜10時間程度)
  • 確定申告に向けた帳簿管理(年間通じて)
  • 材料・備品の発注・支払い管理(月5〜10時間程度)
  • CCUS関連書類や安全書類の作成補助(月2〜5時間程度)

これらの業務を合計すると月30〜40時間程度になるケースも珍しくなく、一般のパート時給1,100〜1,300円(2026年時点の最低賃金水準)で換算すると月3.3万〜5.2万円程度が一つの目安となります。実務上は月8万〜12万円程度で設定している一人親方が多く、税務調査でも否認されにくいとされています。ただし、実際の業務内容に対して著しく高い金額(例:月30万円を超えるケース)は税務署から指摘を受ける可能性があるため注意が必要です。

専従者給与を使った場合の節税効果シミュレーション

実際にどのくらい節税になるのか、具体的な数字で確認しておきましょう。以下は、年収(売上から材料費等を引いた所得)が600万円の一人親方が妻を専従者とした場合のモデルケースです。

専従者なしの場合の税額(参考)

課税所得を計算する際、青色申告65万円控除・基礎控除48万円・国民健康保険料(仮に年60万円)・国民年金保険料(年約20万円)などを差し引いた後に税率が適用されます。ここでは簡略化して、課税所得が約400万円と仮定します。

  • 所得税(400万円 × 20% − 42.75万円):約37.3万円
  • 住民税(400万円 × 10%):約40万円
  • 合計:約77万円

妻に年120万円(月10万円)の専従者給与を払った場合

専従者給与120万円を経費計上すると、課税所得は約400万円から約280万円に下がります。

  • 所得税(280万円 × 10% − 9.75万円):約18.3万円
  • 住民税(280万円 × 10%):約28万円
  • 合計:約46.3万円

一人親方本人の税負担は約30万円削減されます。さらに、妻側は給与所得として120万円の収入がありますが、給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)を合計すると103万円の控除があるため、所得税は約1.7万円、住民税は数万円程度にとどまります。世帯全体で見ると、差し引き年間20〜25万円程度の節税が期待できます。

なお、妻が専従者になると、一人親方本人は配偶者控除(38万円)・配偶者特別控除を使えなくなります。これはデメリットとして差し引く必要があります。配偶者控除(38万円)の税効果は所得税・住民税合わせて約7〜10万円程度なので、それを差し引いても専従者給与を使うほうが多くのケースでメリットが大きくなります。

専従者給与の届出・実務手続きの全手順

ここからは、実際に専従者給与を使い始めるための手順を順番に解説します。初めて手続きをする場合も、この流れに沿って進めれば問題なく対応できます。

STEP1:税務署への届出書提出

最初に行うべきことは、所轄の税務署への届出です。必要な書類は以下のとおりです。

  1. 「青色申告承認申請書」(まだ青色申告をしていない場合)
  2. 「青色事業専従者給与に関する届出書」(税務署窓口・国税庁ホームページから入手可能)

届出書の主な記載事項は以下のとおりです。

  • 専従者の氏名・続柄・生年月日
  • 給与の種類(月給・日給など)
  • 給与の金額(月額○○円)
  • 賞与を支払う場合はその金額・時期
  • 昇給の基準(任意)
  • 専従者が従事する業務の内容

届出書は2部作成して1部に受付印をもらい控えとして保管しましょう。郵送でも提出可能ですが、受付印のある控えが必要な場合は返信用封筒を同封します。e-Taxでの電子提出も可能です。

STEP2:給与の支払いと源泉徴収の管理

専従者給与を支払う際には、通常の給与と同様に源泉徴収が必要です。ただし、月額の給与が「源泉徴収税額表(甲欄)」で定められた金額以下の場合は源泉徴収額がゼロになることもあります。2026年の給与所得の源泉徴収税額表では、扶養家族0人で月額88,000円未満であれば源泉徴収額は0円です。

なお、専従者が複数の控除を持つ場合などは「扶養控除等申告書(マル扶)」を専従者本人に記入してもらい、保管しておく必要があります。

また、給与支払いは必ず銀行振込か記録の残る方法で行うことが重要です。現金手渡しのみでは実際に支払った証拠が残りにくく、税務調査で「本当に払ったのか」と疑われるリスクがあります。通帳の振込記録が最も確実な証拠になります。

月ごとの給与支払いの記録は「給与台帳」として保管しておきましょう。freee・マネーフォワードなどの会計ソフトには給与管理機能があり、自動で記帳できます。

STEP3:年末調整と確定申告への反映

一人親方が専従者1人を雇っている場合でも、「給与所得者の扶養控除等申告書」を専従者に記入・提出してもらうことで年末調整が可能です。ただし、一人親方本人が確定申告を行うため、実務上は年末調整を省略して確定申告で精算するケースも多くあります。

確定申告書では、専従者給与の合計額を「青色専従者給与」として記載します。freeeや弥生などの会計ソフトを使っている場合は、「専従者給与」の科目で月々記帳しておけば、確定申告書への転記は自動で行われます。

専従者側(妻など)も給与収入として確定申告が必要になる場合があります。年収103万円以下であれば所得税はかかりませんが、住民税は年収100万円を超えると発生します。また、専従者が国民健康保険に別世帯加入しているかどうかによっても、保険料の計算が変わるため注意が必要です。

白色申告の専従者控除:届出不要だが上限がある

白色申告をしている一人親方でも、専従者控除を使うことができます。白色申告の場合、届出書の提出は不要で、確定申告書の「事業専従者に関する事項」欄に専従者の情報を記入するだけで控除が適用されます。

控除できる金額の上限は以下のとおりです。

  • 配偶者:86万円
  • その他の親族(子ども・親など):50万円

ただし、控除額は「事業所得 ÷(専従者の人数+1)」が上限となります。たとえば、事業所得が150万円で専従者が1人の場合、150万円 ÷(1+1)=75万円が上限となり、配偶者でも86万円ではなく75万円しか控除できません。

白色申告の専従者控除は「実際に給与を支払わなくても適用できる」という点では手軽ですが、控除額の上限が低く、青色申告の専従者給与と比べると節税効果は限定的です。年間を通じて家族が事業を手伝っている実態があるなら、早めに青色申告に切り替えることを強くおすすめします。

専従者給与で失敗しないための注意点5つ

専従者給与を使う際にありがちなミスを5つ挙げます。税務調査で指摘されやすいポイントでもあるため、事前に確認しておいてください。

注意点①〜⑤のまとめ

  • ①届出を出さずに経費計上している:青色専従者給与は届出なしでは一切認められません。過去の申告で届出なしに経費計上していた場合は修正申告が必要です。
  • ②仕事実態がない・薄いのに給与を払っている:専従者の業務内容を日報・作業記録などで記録しておくことが大切です。「何の仕事をしているか説明できない」状態は危険です。
  • ③給与を現金手渡しにして記録がない:銀行振込にして通帳で証明できるようにすること。現金払いの場合は領収書をきちんと取り交わしておく必要があります。
  • ④他にパート収入があるのに専従者として届け出ている:妻が週の大半をパートに費やしている場合、「専ら事業に従事している」要件を満たさず否認されます。
  • ⑤届出金額を超えた給与を払っている:届出書に記載した金額を超えた部分は経費として認められません。変更する場合は必ず変更届出書を提出してください。

まとめ

一人親方が家族の協力を受けて事業を運営しているなら、専従者給与・専従者控除は必ず検討すべき節税策です。青色申告の専従者給与を正しく活用すれば、年間20〜30万円規模の節税が現実的に可能です。

手続きの流れをおさらいします。

  1. 青色申告承認申請書・青色事業専従者給与届出書を税務署に提出(給与支払開始年の3月15日まで)
  2. 専従者の業務内容を明確化し、作業記録を残す習慣をつける
  3. 給与は銀行振込で毎月定期的に支払い、給与台帳を作成する
  4. 会計ソフトで「専従者給与」として月次記帳し、確定申告で正確に反映させる
  5. 専従者本人も必要に応じて確定申告を行う

「届出書を出し忘れていた」「今年から始めたいが間に合うか」という場合は、早めに所轄税務署または税理士に相談することをおすすめします。節税の機会を毎年逃し続けるのは、一人親方として非常にもったいないことです。

よくある質問

Q. 専従者給与の届出書はいつまでに提出すればいいですか?
A. その年の3月15日までに所轄の税務署へ提出する必要があります。ただし、その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合や、新たに専従者を雇う場合は、開業・専従者を雇い始めた日から2か月以内が期限です。この期限を過ぎると、その年の専従者給与は経費として認められないため注意が必要です。
Q. 妻がパートをしながら事務も手伝っている場合、専従者にできますか?
A. 原則として難しいケースが多いです。専従者として認められるには、年間の半分を超えて(6か月超)その事業に専ら従事していることが必要です。妻が他のパートで週の多くの時間を費やしている場合、「専ら従事している」とは認められない可能性があります。ただし、パートが非常に短時間(週1〜2日程度)で、実態として事業の事務を主に担っている場合は認められることもあります。判断が難しい場合は税務署や税理士に事前確認することをおすすめします。
Q. 白色申告でも専従者控除を使えますか?届出は必要ですか?
A. 白色申告でも専従者控除は使えます。届出書の提出は不要で、確定申告書の「事業専従者に関する事項」欄に必要事項を記載するだけで適用されます。ただし、控除できる金額は配偶者で最大86万円、その他の親族で最大50万円と上限があります。また、事業所得を専従者数+1で割った金額が実際の上限になる場合もあります。青色申告の専従者給与と比べると節税効果は低いため、継続的に家族が手伝っているなら青色申告への切り替えを検討してください。
Q. 専従者給与はいくらに設定するのが税務上安全ですか?
A. 「業務内容に見合った金額」であることが最重要です。実務的には月8万〜12万円(年96万〜144万円)程度が、建設業の一人親方が配偶者に設定するケースとして多く、税務調査での否認例も少ないとされています。金額の根拠として、専従者が担う業務(記帳・請求書作成・書類提出等)の作業時間を記録し、地域の最低賃金・パート相場と照らし合わせて設定すると合理性を説明しやすくなります。著しく高い金額(月20万円超など)は業務実態との整合性を丁寧に説明できるようにしておく必要があります。
Q. 専従者にすると配偶者控除が使えなくなると聞きましたが、それでも専従者給与を使うメリットはありますか?
A. はい、多くのケースではメリットのほうが大きくなります。配偶者控除(38万円)を失うことで所得税・住民税合わせて約7〜10万円の節税効果がなくなりますが、専従者給与として月10万円(年120万円)を経費計上した場合の節税効果は年間20〜30万円程度になります。差し引きで10〜20万円程度の節税になる計算です。ただし、一人親方の所得水準・専従者の給与額・その他の控除状況によって変わるため、freeeなどの会計ソフトや税理士にシミュレーションしてもらうとより正確な比較ができます。

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