大阪万博後の関西はどうなる?「祭りのあと」でも仕事は続く
万博が終わっても「すぐに仕事が減る」わけではない
2025年の大阪・関西万博は閉幕しましたが、建設の仕事はそこで終わりではありません。パビリオンや仮設施設の解体・撤去、資材の搬出、跡地の整地が2026年以降も続きます。建物を建てる工事のあとには、必ず片付ける工事があります。
解体や撤去は、建てる工事より短い期間で進むことが多いものの、現場の数は多く、未経験者の募集も比較的多い分野です。仕事の例は次のとおりです。
- パビリオンの内装材・設備の撤去(手元作業・分別)
- 鉄骨や木造構造物の解体(重機オペレーター・解体工)
- 産業廃棄物の分別・搬出(運搬・積み込み)
- 跡地の整地・仮設道路の撤去(土木作業員)
関西の解体・土木の未経験者の日当は9,000〜12,000円程度が目安です。工事の山場が一段落すると募集は減るため、撤去工事だけで長く働こうとするより、次の大型工事につながる会社を選ぶのが現実的です。
次の柱は夢洲のIR(統合型リゾート)建設
万博会場と同じ夢洲では、カジノを含むIR(統合型リゾート:ホテル・劇場・会議場などを一体にした大型施設)の整備が進められています。開業は2030年頃が目標とされており、本体工事は2026年以降に本格化していく見込みです。
IRは大型ホテルや展示場が中心のため、建物の骨組みから仕上げまで長く工事が続きます。工事の流れはおおむね次の順番です。
- 地盤改良・基礎工事(土木・杭打ち・鉄筋・型枠)
- 鉄骨の建て方(鉄骨鳶・溶接工)
- 外装・屋根・防水工事
- 電気・空調・給排水などの設備工事
- 内装・仕上げ工事(ボード・クロス・床・塗装)
前半は骨組みの職種、後半は設備と内装の職種に仕事が移ります。数年単位で関わる職種が入れ替わるので、自分がどの段階で入れるかを意識すると働き口を見つけやすくなります。ただし計画の変更や遅れも起こり得るため、「必ずこの時期に人手が必要」と決めつけず、求人の動きを見ながら判断しましょう。
関西で需要が続く職種と働き方の目安
大阪では万博やIR以外にも、梅田周辺や大阪駅北側の再開発、鉄道の延伸工事、老朽化したビルやマンションの建て替えが続いています。そのため関西全体で見ると、特定の工事に頼らない仕事の厚みがあります。
- 鉄骨鳶・とび土工:大型ビル・ホテル案件で需要が高い。経験3年以上で日当15,000〜20,000円程度
- 設備工(電気・空調・配管):IRやホテルは設備量が多く、工事後半に長く仕事がある
- 内装工:ホテル客室のように同じ仕様の部屋が多いと、未経験でも作業を覚えやすい
- 解体工:古いビルの建て替えが続き、万博後も一定の需要がある
関西は東京より日当が1,000〜2,000円ほど低めな一方、家賃も安く、手取りの暮らしやすさでは大差がない場合もあります。地元で長く働きたい人には、選択肢の多い地域です。
リニア中央新幹線と名古屋・品川|長期戦になった巨大工事
開業延期は「仕事が長く続く」ことでもある
リニア中央新幹線(品川〜名古屋)は当初2027年の開業を目指していましたが、静岡工区の着工の遅れなどにより、JR東海は開業を2034年以降と見込んでいます。ニュースでは「延期」と悪い印象で語られがちですが、働く側から見ると、工事期間が長くなるということでもあります。
リニアは路線の大部分が地下や山を通るトンネルで、工事は神奈川・山梨・長野・岐阜・愛知など広い範囲に及びます。駅の建設、変電所、車両基地なども含めると、2026年以降も複数の県で工事が続く見込みです。
- 品川駅・名古屋駅:地下駅の構築工事
- 神奈川・山梨・長野・岐阜:山岳トンネル・非常口・駅工事
- 都市部の地下:シールドトンネル(大型の掘削機で地下を掘り進める工法)
一方で、工事計画は自治体との調整で変わることがあります。特定の工区だけを当てにせず、会社がほかの公共工事も持っているかを確認しておくと安心です。
中心はトンネル・土木工事|稼げるが生活は変わる
リニアの仕事の多くは土木工事です。トンネルの中で掘削・吹付け(コンクリートを壁面に吹き付けて固める作業)・鉄筋組み・覆工(トンネル内側をコンクリートで仕上げる作業)などを行います。山の中の現場が多く、寮や宿舎に住み込みで働くケースが一般的です。
トンネル工事の特徴は次のとおりです。
- 日当は未経験で12,000〜15,000円、経験者で18,000〜25,000円程度と高め
- 昼勤・夜勤の交代制で24時間掘り進める現場もある
- 寮費・食費が会社負担または格安の場合が多く、貯金しやすい
- 山間部で娯楽が少なく、家族と離れて暮らすことになりやすい
「短期間でしっかり稼ぎたい」「若いうちに貯金したい」人には向いていますが、生活リズムの変化はかなり大きくなります。応募前に、勤務シフトと休みの取り方、帰省できる頻度を必ず確認しましょう。
名古屋・品川の駅周辺は再開発ラッシュ
リニアの始発駅になる品川と名古屋では、駅前の再開発が同時に進んでいます。品川駅周辺では高輪ゲートウェイ周辺のまちづくりや駅の改良工事、名古屋駅周辺では駅前ビルの建て替えや広場の再整備が計画されています。
こうした都市部の工事は通勤できる場所にあり、トンネル工事より生活の変化が少ないのが利点です。
- 駅の改良工事:終電後の夜間作業が多く、深夜手当がつく
- 高層ビル工事:鳶・鉄筋・型枠・設備・内装と幅広い職種が必要
- 地下工事:山留め(掘った穴の周りが崩れないように支える工事)など土木系の需要
名古屋圏は自動車関連の工場工事もあり、建設の仕事が比較的安定している地域です。リニア関連とあわせて、愛知県で建設業に入る選択肢は今後も十分にあります。
東京・福岡・札幌の再開発と工場建設|全国で仕事が増える場所
東京は再開発が途切れない「最大の現場」
東京では、渋谷・虎ノ門・八重洲・日本橋・品川・中野など、大規模な再開発が複数同時に進んでいます。高度経済成長期に建てたビルの建て替え時期とも重なり、2026年以降も大型工事が続く見込みです。
東京で働くメリットとデメリットを整理すると次のとおりです。
- 日当相場が全国でも高く、未経験でも10,000〜14,000円程度の求人が多い
- 現場が電車圏内に多く、職種や会社を選びやすい
- 家賃が高く、手取りが多くても生活費がかさむ
- 大型現場は安全ルールや書類が厳しく、最初は覚えることが多い
大手ゼネコンの現場が多い分、安全教育や休日の取り方が整っている現場に入りやすいのも特徴です。未経験者が「きちんとした現場で基礎から学びたい」なら、東京の再開発現場は良い入口になります。
福岡・札幌など地方の中核都市も再開発が進む
地方でも大きな動きがあります。福岡市では天神や博多駅周辺でビルの建て替えが進められ、札幌市では北海道新幹線の延伸を見すえた駅前再開発が計画されています。北海道新幹線の札幌開業は当初予定から遅れる見通しで、関連工事も長期化しそうです。
地方の中核都市で働く場合のポイントは次のとおりです。
- 日当は東京より1,000〜3,000円低い傾向だが、家賃が安い
- 大型工事のときは県外から職人が集まり、地元の人手が重宝される
- 工事が一段落したあとの仕事量は、地元の会社の受注力しだい
- 北海道など雪国は冬場の工事が減り、季節による収入の波がある
Uターンや地元就職を考えている人は、「再開発の仕事が終わったあとも、その会社に公共工事や改修工事の仕事があるか」を面接で聞いておくと安心です。
半導体工場・データセンターは新しい成長分野
近年とくに伸びているのが、半導体工場やデータセンター(大量のサーバーを置く建物)の建設です。熊本県では大手半導体メーカーの工場、北海道千歳市では次世代半導体の工場建設が進み、周辺の住宅や道路の工事も増えました。データセンターは千葉・東京西部・大阪周辺などで建設が相次いでいます。
これらの建物は「設備のかたまり」と言えるほど電気・空調・配管が多いのが特徴です。
- 電気工事士:大容量の電気設備、配線工事の需要が非常に高い
- 空調・配管工:精密な温度管理や冷却設備が必要
- クリーンルーム工事:ほこりを極限まで減らした部屋をつくる専門の内装工事
工場周辺では人手不足で日当が上がりやすく、経験者は20,000円を超える例もあります。未経験からは手元作業で入り、電気工事士などの資格を取ると活躍の場が一気に広がります。
インフラの老朽化と防災工事は全国どこでも続く
派手なニュースにはなりにくいものの、最も安定しているのがインフラの維持・更新です。橋・トンネル・上下水道・道路の多くは建設から50年前後がたち、補修や架け替えが全国で必要になっています。さらに、能登半島地震など災害からの復旧、河川の堤防強化といった防災工事も続いています。
- 橋やトンネルの補修工事(土木作業員・塗装工・とび)
- 上下水道管の入れ替え工事(配管工・土木)
- 河川・砂防・道路の災害対策工事(重機オペレーター)
- 被災地の復旧工事(短期間で人手が必要になり、日当が上がりやすい)
こうした工事は国や自治体の予算で行われる公共工事が中心で、景気の影響を受けにくいのが強みです。地元を離れずに長く働きたい人ほど、インフラ系の会社を検討する価値があります。
2026年以降に需要が伸びる職種と未経験者の入り方
電気・設備系:どの地域でも最も不足しやすい職種
再開発ビル、IR、半導体工場、データセンター、どの工事にも共通して必要なのが電気・空調・配管の設備職です。建物が高性能になるほど設備の量が増えるため、今後も人手不足が続くと見られています。
- 未経験1年目の日当:9,000〜12,000円程度、月給制なら20〜24万円程度
- 資格(第二種電気工事士など)を取ると手当がつき、任される仕事が増える
- 新築だけでなく改修・メンテナンスの仕事もあり、景気に左右されにくい
- 屋内作業が多く、天候の影響を受けにくい
体力面の負担も比較的少なく、年齢を重ねても続けやすい職種です。「長く安定して働きたい」人の第一候補になります。
土木・トンネル・重機:大型インフラ工事の主役
リニア、道路、河川、防災工事など、土木系の仕事は量も期間も大きくなります。とくに重機オペレーターは高齢化で人手が減っており、若い人材は歓迎されやすい状況です。
- 土木作業員の未経験日当:9,000〜13,000円程度
- 重機オペレーターは資格取得後、日当15,000〜20,000円程度も目指せる
- トンネル工事は寮付き・高日当だが、勤務地と生活リズムが変わる
- ICT施工(ドローン測量や自動制御の重機)の導入で、機械に強い若手が評価されやすい
屋外作業で夏・冬はきついものの、公共工事が多く仕事の安定感は高い分野です。
解体・改修・内装:建て替え時代に強い職種
再開発は「古い建物を壊して新しく建てる」工事です。つまり解体の仕事が先にあり、そのあと内装や改修が続きます。新築が減る地域でも、古いビルやマンションの改修需要は増えていきます。
- 解体工:未経験日当10,000〜13,000円程度。粉じん対策と安全管理が重要
- 内装工:ボード貼り・床・クロスなど、同じ作業の繰り返しで覚えやすい
- リフォーム:住宅中心で、お客さんと接する機会が多い
内装やリフォームは独立しやすい職種でもあり、将来は一人親方として働く道も見えてきます。
未経験者が「地域×職種」を選ぶときのチェックリスト
需要が伸びる場所でも、会社選びを間違えると長く続きません。応募前に次の点を確認しましょう。
- 大型工事が終わったあとの仕事(公共工事・改修・他県の現場)があるか
- 寮・宿舎の有無と費用、帰省の頻度(トンネルや地方工事の場合)
- 日当制か月給制か、雨の日や工事の切れ目の収入はどうなるか
- 資格取得の費用を会社が出してくれるか
- 社会保険への加入、建設キャリアアップシステムへの登録の有無
「今話題の工事」だけで選ぶより、「その工事が終わっても仕事がある会社か」で選ぶほうが、結果的に長く安定して働けます。
まとめ|建設需要は「場所」が変わっても続いていく
2026年以降も建設の仕事はなくならない
大阪万博の閉幕で関西の仕事が減ると心配されがちですが、実際には撤去工事、夢洲のIR、梅田周辺の再開発と、次の工事が控えています。リニアは開業が延びた分だけ工事期間が長くなり、東京・名古屋・福岡・札幌では再開発が続きます。さらに半導体工場やデータセンター、インフラの更新や防災工事は、全国どこでも必要とされています。建設の仕事は「なくなる」のではなく、「必要とされる場所と職種が移り変わっていく」と考えるのが現実に近い見方です。人手不足が続く中で、若い未経験者は今後も歓迎されやすい立場にあります。
職種選びのポイントは「次の現場がある職種」
一つの大型工事だけを当てにすると、工事が終わったときに仕事が途切れるおそれがあります。長く働くなら、次のような考え方で職種を選ぶのがおすすめです。
- 安定重視:電気・空調・配管などの設備職
- 稼ぎ重視:トンネル・土木・重機(寮付きの現場も多い)
- 地元重視:インフラ補修・解体・改修工事
- 将来の独立重視:内装・リフォーム・塗装
どの職種でも、最初の1〜3年で資格と経験を積めば、需要の変化にあわせて働く場所を選べるようになります。
まずは住みたい地域の求人から見てみよう
最初の一歩は、住みたい地域や通える範囲でどんな工事が動いているかを知ることです。ハローワークや求人サイトで「設備」「土木」「解体」などの職種名と地域名で検索すると、その地域の需要がおおよそ見えてきます。気になる会社があれば、面接で「今どんな現場を持っていて、それが終わったら次は何があるか」を聞いてみてください。この質問に具体的に答えられる会社は、仕事の見通しを持っている会社です。焦らず、自分の生活と体力に合った地域と職種を選ぶことが、建設業で長く働くいちばんの近道です。