現場ベース-段取り-

電気工事士×施工管理技士のダブルライセンスで年収はいくら変わるか【2026年・企業規模別】

「資格を2つ取ったのに、思ったほど給料が上がらない」——そんな声が現場から絶えない。電気工事士と施工管理技士のダブルライセンスが年収に与える影響は、手当の加算だけではない。昇格スピード・転職交渉力・独立後の受注力まで含めた「年収の本質的な上がり方」を、企業規模別・雇用形態別に徹底解説する。

ダブルライセンスの「年収インパクト」を正しく理解するために

電気工事士と施工管理技士を両方保有している技術者が「思ったほど年収が上がらない」と感じる原因の多くは、年収アップを「資格手当の積み上げ」としか捉えていない点にある。資格手当はあくまで基本給への加算であり、年収全体の構成要素のなかでは10〜20%程度に過ぎないケースが多い。

ダブルライセンスによる年収アップの本質は、手当の金額よりも「会社にとって替えが利かない人材になること」にある。監理技術者として複数現場に配置できる、電気設備の専門知識でクライアントと直接折衝できる、建設業許可の専任技術者として社内で機能できる——こうした役割の拡大が、昇格・昇給・転職交渉力という形で年収全体を押し上げる構造だ。

本記事で紹介する年収データおよび資格手当の数値は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(2024年度版)、建設業振興基金が公表する技術者向け資格手当調査レポート、および各社が公開する求人票・採用ページ上の記載情報を参照・整理したものである。企業ごとに制度は異なるため、あくまで市場の「傾向値」として活用してほしい。

年収に影響する3つの経路を整理する

ダブルライセンスが年収に影響する経路は大きく3つある。

  1. 資格手当の加算:月額で直接上乗せされる最もわかりやすい経路。ただし企業規模・社内規程によって差が大きい。
  2. 役職昇格の前倒し:監理技術者要件を満たすことで主任→課長クラスへの昇格が1〜2年早まるケースがある。役職給が加わることで年収ベースが大きく変わる。
  3. 転職・独立時の交渉力:「1級施工管理技士+第1種電気工事士」の組み合わせは求人票の応募要件として明示される案件が多く、入社時の提示年収が他候補より50万〜150万円高い状態でスタートしやすい。

この3経路を念頭に置いたうえで、以降の数値データを読み進めてほしい。

資格手当の相場:単独保有 vs ダブルライセンスの比較

資格手当の設定額は企業ごとに異なるが、公開求人票や業界団体の調査をもとにすると、以下の水準が目安として浮かび上がる。数値はあくまで市場の傾向値であり、実際の支給額は勤務先の規程を確認すること。

  • 第2種電気工事士のみ:月額3,000〜8,000円
  • 第1種電気工事士のみ:月額8,000〜20,000円
  • 2級電気工事施工管理技士のみ:月額10,000〜20,000円
  • 1級電気工事施工管理技士のみ:月額20,000〜50,000円
  • 第1種電気工事士+1級電気工事施工管理技士(ダブル):月額35,000〜80,000円

単純に足し算すると月額28,000〜70,000円になるところ、ダブルライセンス保有者には「複数資格加算手当」として別枠で月額10,000〜20,000円を上乗せする企業も存在し、年換算では単独保有者より年間50万〜100万円程度多く手当を受け取るケースが現実的な上限として見える。ただし、中小企業では手当の上限額を設けているケースも多く、「足し算にならない」運用も珍しくない点には注意が必要だ。

手当の「実額」より「昇格後の基本給」が年収を決める

資格手当が月額50,000円増えても、年収増は60万円にとどまる。一方で、ダブルライセンスをきっかけに課長職へ昇格した場合、役職給・管理職手当・賞与係数の変化が合わさって年収が100万〜200万円規模で増加するケースがある。手当の額面だけで資格取得の投資対効果を判断すると、本質的な経済メリットを見誤る。

企業規模別:ダブルライセンス保有者の年収実態

企業規模によって年収水準と資格の「効き方」は大きく異なる。以下では従業員数を基準に3区分で整理する。なお年収帯は経験年数5〜10年の技術者を想定した参考値であり、厚生労働省の統計データおよび建設業界の公開求人情報をもとに整理している。

中小電気工事会社(従業員50人未満)

中小電気工事会社では資格手当の設定額が低い傾向があるが、そもそも資格保有者が少ないため「昇格・昇給の裁量交渉」がしやすい環境でもある。社長や役員と直接交渉できる距離感が近く、1級施工管理技士を取得した翌月から「現場代理人手当」「技術者加算」として実質的な給与改定が行われるケースも多い。

  • 第1種電気工事士のみ(経験5年):年収400万〜480万円
  • 第1種電気工事士+2級電気工事施工管理技士:年収430万〜530万円
  • 第1種電気工事士+1級電気工事施工管理技士:年収480万〜620万円

中小では1級施工管理技士を取得することで「現場代理人」の肩書が付き、現場手当・交通費・出張手当が加算されて実質年収が上がるパターンが多い。また資格を持った状態で他社への転職意向を匂わせると、引き留めとして年収の大幅な引き上げ交渉に応じる経営者も少なくない。

中堅ゼネコン・電気設備専門会社(従業員50〜500人)

中堅規模では資格手当の制度が整備されており、ダブルライセンス保有者への加算が明文化されているケースが増えている。等級・グレード制を採用している企業では、資格取得が昇格条件に明記されており、1級施工管理技士の取得が主任→係長→課長への昇格に直結しやすい。

  • 第1種電気工事士のみ(経験5年):年収450万〜550万円
  • 第1種電気工事士+2級電気工事施工管理技士:年収500万〜620万円
  • 第1種電気工事士+1級電気工事施工管理技士:年収580万〜750万円

中堅規模が最もダブルライセンスの「効き方」が大きいセグメントといえる。監理技術者を確保したい案件が多い一方で、保有者数が大手ほど潤沢でないため、社内での希少価値が高まりやすい。転職市場においても、中堅ゼネコンへの転職条件として「1級+電工1種のセット」を掲げる求人が2026年時点の関東・関西圏で増加傾向にある。

大手ゼネコン・電気設備大手(従業員500人以上)

大手企業では資格手当の絶対額は大きいが、等級制度が細かく設計されており、資格取得が昇格の「必要条件」であっても「十分条件」ではないケースが多い。つまり、資格を取っても査定・評価・推薦がなければ昇格しない仕組みになっている。一方で、ベースの年収水準が高いため、資格手当の金額が同じでも絶対的な年収は中小・中堅より高くなる。

  • 第1種電気工事士のみ(経験5年):年収500万〜650万円
  • 第1種電気工事士+2級電気工事施工管理技士:年収560万〜700万円
  • 第1種電気工事士+1級電気工事施工管理技士:年収650万〜900万円

大手では1級電気工事施工管理技士を取得して監理技術者として登録されると、海外案件・大型プロジェクトへのアサイン機会が増え、海外赴任手当や特殊現場手当が加算されて年収が一気に跳ね上がるケースもある。ただし昇格スピードは中堅ほど速くないため、「資格取得→すぐ昇格」を期待するなら中堅規模の方が合っている場合もある。

転職市場における「ダブルライセンスの価格」

2026年の建設・電気設備業界では、技術者不足を背景に資格保有者の求人市場価値が高止まりしている。特に「1級電気工事施工管理技士+第1種電気工事士」の組み合わせは、求人票の応募要件欄に明示される件数が増加しており、保有者は複数社から競合オファーを受けやすい状況にある。

転職時に期待できる年収アップ幅の目安

転職エージェント各社が公開するデータや業界誌の転職事例をもとにすると、以下の傾向が読み取れる。

  • 同規模・同職種への転職(単独資格):現年収比+5〜15%程度
  • ダブルライセンス保有での同規模転職:現年収比+15〜30%程度
  • ダブルライセンス保有での中小→中堅への転職:現年収比+20〜40%程度
  • ダブルライセンス保有での中堅→大手への転職:現年収比+10〜25%程度(ベースが上がるが昇格スピードが落ちるリスクあり)

重要なのは、転職時に「入社時年収」の交渉において資格の組み合わせが明確な根拠になる点だ。「監理技術者として即戦力で動ける」「電気設備の専任技術者として建設業許可の維持に貢献できる」といった具体的な価値提示ができるため、エージェントを通じた年収交渉の場でも根拠が立てやすい。

独立・一人親方としての「ダブルライセンスの価値」

独立・開業を視野に入れている技術者にとって、ダブルライセンスの意味合いはさらに変わる。建設業許可の取得において、電気工事業の許可申請では「専任技術者」の要件として第1種電気工事士または1級電気工事施工管理技士のいずれかが必要になる。両方を持っていれば、許可申請の要件充足という点で書類上も強固な体制を示せる。

また、受注できる工事の幅も広がる。電気設備工事単体だけでなく、施工管理を含む複合的な工事の元請けとして動けるため、年間売上の上限が単独資格の一人親方と比べて大きく異なる。具体的には、電気工事士のみの一人親方が年間売上800万〜1,200万円程度に留まるケースが多い一方、施工管理技士も保有して元請け案件を取れるようになると年間1,500万〜3,000万円規模まで事業を伸ばす事例も報告されている。

ただし独立の場合は社会保険の自己負担、経費管理、資材調達コストなども発生するため、「売上=年収」ではない点を踏まえた計画が必要だ。

まとめ:ダブルライセンスは「手当の加算」ではなく「キャリアの構造を変える」投資だ

電気工事士と施工管理技士のダブルライセンスが年収に与えるインパクトを整理すると、以下のポイントに集約される。

  • 資格手当の月額差は市場傾向値として月額35,000〜80,000円(ダブル)vs 単独保有の水準が目安だが、企業規模・規程によって大きく異なる
  • 年収への実質インパクトは「手当」よりも「昇格スピード」「転職時の交渉力」「独立後の受注力」によるところが大きい
  • 中堅規模の企業でダブルライセンスの効果が最も発揮されやすく、年収580万〜750万円の水準が現実的なレンジ
  • 大手では手当額は大きいが昇格スピードが遅く、中小では手当が低いが裁量交渉がしやすいというトレードオフがある
  • 転職市場では「1級施工管理技士+第1種電気工事士」の組み合わせで現年収比15〜40%のアップが期待できるケースがある

資格取得に要する費用・時間・労力を「投資」として考えるなら、ダブルライセンスのリターンは手当の加算だけで計算してはいけない。昇格前倒しによる生涯年収への影響、転職一回あたりの年収交渉余地の拡大、独立後の事業規模の上限——この三点を含めて試算すると、1級電気工事施工管理技士の取得コスト(受験料・講習費・勉強時間の機会コスト含め20万〜40万円程度)は、数年以内に回収できる水準の投資であることが見えてくるはずだ。

次のアクションとして、まず自社の資格手当規程と昇格要件を人事担当者に確認し、「ダブル取得後に何が変わるか」を具体的に把握しておくことをすすめる。そのうえで転職市場の動向も並行してリサーチし、社内昇格と転職のどちらが年収最大化に近いかを比較検討するのが、最も現実的なキャリア戦略といえる。

よくある質問

Q. 電気工事士と電気工事施工管理技士は同じ資格ですか?どう違うのですか?
A. まったく異なる資格です。電気工事士は電気工事を「自ら施工する」ための国家資格で、第2種・第1種があります。一方、電気工事施工管理技士は電気工事の「現場を管理・監督する」ための国家資格で、2級・1級があります。1級電気工事施工管理技士は監理技術者として大型現場の管理ができますが、電気工事士の資格がなければ自ら工事を行う行為は制限されます。両方保有することで「施工も管理もできる技術者」として市場価値が高まります。
Q. ダブルライセンスを目指す場合、どちらの資格を先に取るべきですか?
A. 実務経験のルートによって異なりますが、多くのケースでは「第1種電気工事士を先に取得し、その後1級電気工事施工管理技士を目指す」流れが現実的です。第1種電気工事士は実務経験3年以上で取得でき、施工管理技士の1級は一次検定(旧学科)合格後に二次検定受験資格として所定の実務経験が必要です。2026年時点では施工管理技士の受験資格が改正されており、最新の受験要件は国土交通省や(一財)建設業振興基金の公式サイトで確認することを強くすすめます。
Q. 資格手当の金額は会社と交渉できるものですか?
A. 社内規程に明記された手当額は原則として交渉の対象外ですが、規程に「特別加算」「技術者手当」などの裁量項目がある場合は交渉の余地があります。また転職時の「入社時年収交渉」では、ダブルライセンス保有は有力な根拠になります。交渉の際は「監理技術者として即配置可能」「専任技術者として許可維持に貢献できる」など、会社にとっての具体的なメリットをセットで提示するのが効果的です。
Q. ダブルライセンスを持っていても年収が上がらないのはなぜですか?
A. 主な原因は3つ考えられます。①勤務先の資格手当規程の上限が低く設定されている、②資格を取得しても社内の役職・等級が変わっていない(昇格申請や評価面談が必要なケースも多い)、③現在の年収が既に市場水準を上回っており、転職による年収アップ余地が少ない、といった状況です。資格取得後に年収が変わらない場合は、まず人事・上司に資格取得の報告と処遇見直しの相談を行い、それでも変化がなければ転職市場での自分の価値を転職エージェントに査定してもらうことをすすめます。
Q. 1級電気工事施工管理技士の取得難易度と合格率はどのくらいですか?
A. 1級電気工事施工管理技士の一次検定(旧学科試験)の合格率は例年40〜60%程度で推移しています。二次検定(旧実地試験)は30〜50%程度となっており、合算すると最終合格率は20〜35%前後とされています。難易度は「しっかり準備すれば合格できる」水準で、独学でも合格者は多いですが、経験記述の対策には添削サポート付きの通信講座を活用する技術者が増えています。正確な合格率・試験日程は(一財)建設業振興基金の公式サイトで毎年更新される情報を確認してください。

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