建設業の資格取得費用、相場はいくら?まず数字を把握しよう
建設業に入職すると、早い段階から「資格を取れ」と言われる場面が増える。しかし、資格取得には思った以上にお金がかかる。受験料だけでなく、テキスト代・模擬試験代・講習会参加費・交通費など、トータルでみると数万円から十数万円に達することも珍しくない。
まずは代表的な資格の費用相場を確認しておこう。数字を知っておくことで、「会社に負担してもらえるかどうか」の判断基準にもなる。
- 2級建設業経理士(2級):受験料 約7,000円 / テキスト・問題集 約3,000〜5,000円
- 2級建築施工管理技士(第一次・第二次):受験料 各約14,000円 / 参考書・通信講座 約10,000〜50,000円
- 1級建築施工管理技士(第一次・第二次):受験料 各約14,000〜17,000円 / 通信講座・予備校 約30,000〜120,000円
- 技能検定(とび・左官・鉄筋・配管など)3級〜1級:受験料 約3,100〜18,200円(等級・職種により異なる) / テキスト・実技練習費 約5,000〜30,000円
- 玉掛け技能講習・フォークリフト運転技能講習など:講習費 約15,000〜35,000円(丸2日〜3日の講習込み)
- 足場の組立て等作業主任者技能講習:約20,000〜25,000円
- 電気工事士(第二種):受験料 約9,300円(筆記) / 技能試験 約9,600円 / テキスト 約2,000〜5,000円
施工管理技士の一次・二次をあわせて受験し、通信講座も活用すると、受験〜合格までに10万円を超えるケースは珍しくない。「自分で全額負担するのか」と考えると、かなり重い出費だ。だからこそ、会社の費用負担制度をしっかり確認することが重要になる。
実態調査:建設業で「会社が費用を出す」ケースはどのくらいある?
結論から言うと、建設業における資格取得費用の会社負担は「ある会社もあれば、全くない会社もある」というのが正直なところだ。大手・中堅・中小・一人親方に分けて実態を整理する。
大手・準大手ゼネコン・専門工事会社の場合
従業員数が数百人以上の規模になると、資格取得支援制度が就業規則や福利厚生規程に明文化されているケースが多い。具体的には以下のような制度が一般的だ。
- 受験料の全額または一部支給(合格時に支給されるケースも)
- 会社指定の通信講座・予備校費用を会社が直接支払う
- 試験勉強のための有給扱い「受験準備休暇」の付与
- 合格時に「資格手当」として毎月の給与に上乗せ(月5,000〜30,000円程度)
- 合格祝い金の支給(1〜10万円程度)
大手では「1級施工管理技士の受験料・講習費は全額会社負担、合格後に資格手当として月2万円を支給」といった手厚い制度が整備されているケースも少なくない。ただし、「合格できなかった場合は半額自己負担」「在職3年以内に退職した場合は返還義務あり」といった条件が付くこともある。入職前に確認が必要だ。
中小・零細の建設会社の場合
中小・零細規模の会社では、資格取得費用の制度が就業規則に明記されていないことも多い。しかし「制度がない=全額自己負担」とは限らず、慣習として「受験料は会社が出す」「講習代は会社のカードで払う」という運用をしている現場も多数ある。
実態として多いパターンは以下の3つだ。
- 受験料のみ会社負担、テキスト・通信講座は自己負担:受験料は経費として落としてもらえるが、勉強のための教材費は自分で用意するケース。
- 会社が必要と判断した資格だけ全額負担:玉掛けやフォークリフトなど「現場で即必要な資格」は会社が全額出すが、施工管理技士のような上位資格は自己負担になるケース。
- 完全に自己負担だが、合格後に一時金・手当を支給:受験前は自分で全額払うが、合格証を提出すると「お祝い金」として1〜3万円を支給する運用。
中小では「社長に直接頼めば出してくれる」という個人交渉が通りやすい環境でもある。制度の有無に関わらず、積極的に聞いてみることが大切だ。
職種別・資格費用の会社負担の実態比較
職種によって、会社が費用を出してくれやすい資格と出にくい資格の傾向がある。以下に職種別の実態をまとめた。
施工管理・現場監督系
施工管理職は、資格がキャリアアップに直結するうえ、会社にとっても有資格者を増やすことが受注・入札に有利になる。そのため、費用負担がもっとも手厚い職種のひとつだ。
- 2級・1級施工管理技士の受験料・通信講座費:会社負担率が高い(大手で8割以上)
- 受験準備のために残業を免除される「受験配慮」がある会社も存在する
- 合格後の資格手当:月額5,000〜30,000円程度が相場
施工管理として入職した場合、「資格を取ることが業務の一環」という認識が強く、費用交渉もしやすい環境にある。入職時の面接で「施工管理技士取得への会社サポートはありますか」と積極的に聞いてよい。
とび・土工・型枠・鉄筋・左官などの職人系
職人系の職種では、技能検定(国家検定)の受験費用は「取りたい人が自腹で取るもの」という文化が残る会社も多い。一方で、現場で即必要な「特別教育」「技能講習」(玉掛け・クレーン・足場など)は会社が全額負担するケースが圧倒的に多い。
- 玉掛け技能講習・フォークリフト:ほぼ全会社が会社負担(現場で必須のため)
- 足場の組立て等作業主任者・職長安全衛生責任者教育:会社負担が多い
- 技能検定2級・1級(とび、左官、タイル張りなど):自己負担の会社が多いが、合格お祝い金・手当がある会社も増加傾向
技能検定の上位級(1級)は取得することで「班長・職長」への昇格や日当アップに直結する。「取ったら給与に反映してもらえるなら、費用を出してほしい」という交渉の切り口が有効だ。
電気・配管・空調などの設備系
電気工事士・管工事施工管理技士・消防設備士など、設備系の資格は法律上の「必置資格」が多く、会社が費用を出す動機が強い。電気工事士がいないと一定の工事を請け負えない、という制約があるためだ。
- 第二種・第一種電気工事士:受験料・実技材料費を会社負担とするケースが多い
- 消防設備士・危険物取扱者:会社負担が多い
- 管工事施工管理技士:設備会社では費用支援が手厚い傾向
設備系は「資格を持っている人手が足りない」業界状況もあり、取得費用の支援に積極的な会社が多い。求人票に「資格取得支援制度あり」と明記されている確率も他職種より高い。
資格費用を会社に出してもらうための交渉術・具体的なやり方
「制度がないから無理」とあきらめる必要はない。建設業では、個人的な申し出・交渉が実際に通りやすい文化がある。以下の手順とポイントを参考にしてほしい。
交渉前に準備すること
交渉をうまく進めるために、事前にいくつかの情報を整理しておくと説得力が増す。
- 費用の内訳を具体的に出す:「受験料◯円、テキスト代◯円、合計◯円です」と数字で伝える。漠然と「お金がかかる」より、相手が判断しやすい。
- 会社にとってのメリットを言語化する:「1級を取ると主任技術者として現場に配置できるので、受注できる工事の幅が広がります」など、会社側の利益を伝える。
- 同業他社の支援制度を調べておく:「業界では〇〇程度の支援をしている会社が多い」という情報を持っておくと、交渉の根拠になる。
- 合格後の行動を約束する:「合格したら〇年は在籍して貢献します」という言葉は、会社の「投資した費用が無駄になるのでは」という懸念を和らげる。
交渉のタイミングは、入職時の条件交渉か、次の試験申込み締切の1〜2ヶ月前が理想だ。直前になると会社側の判断時間が取れないため、早めに動くこと。
交渉時の具体的な言い回し例
「〇〇の資格を来年受験したいと考えています。受験料と教材費がトータルで約〇万円かかるのですが、会社でサポートいただける可能性はありますか?取得後は主任技術者として現場を任せてもらえる立場になりますし、会社にも貢献できると考えています。全額でなくても、受験料だけでも見ていただけると助かります。」
このように「全額でなくても」と段階を設けることで、会社が「半額なら出せる」「受験料だけなら」という形で応じやすくなる。最初から完璧な条件を要求するより、交渉の余地を作ることが重要だ。
また、交渉相手は直属の上司(親方・現場監督)より、総務・人事担当者や社長に直接話すほうが決裁が早い中小会社も多い。会社の規模に合わせて相手を選ぼう。
知っておきたい「助成金・補助制度」で資格費用を安く抑える方法
会社交渉と並行して、公的な助成金・補助制度を活用する方法も有効だ。未経験者や転職者でも使えるものがあるので、あわせて確認しておこう。
- 教育訓練給付制度(ハローワーク):厚生労働省指定の講座を受講した場合、受講費用の20〜70%が支給される(一般・特定・専門実践の3種類)。建設業関連の施工管理技士講座・電気工事士講座など対象講座多数。在職中でも利用可能な場合がある。
- 建設業振興基金の技能者育成支援:建設業の技能者を対象にした研修・技能検定費用の補助制度。一般財団法人建設業振興基金が窓口。
- 都道府県の職業訓練・技能振興補助:各都道府県が独自に実施している技能振興補助金。技能検定の受験料を補助する自治体もある。居住地の労働局や都道府県の産業担当部署に問い合わせてみよう。
- 人材開発支援助成金(会社側が申請):会社が従業員の資格取得にかかる費用を支援した場合、一定割合を国が助成する制度。会社に「この助成金を使えば会社の持ち出しが減りますよ」と提案することで、費用負担交渉がスムーズになるケースもある。
特に教育訓練給付制度は、雇用保険の加入期間が1年以上(初回は1年、2回目以降は3年)あれば利用できるため、入職後1〜2年が経過したタイミングで使える可能性が高い。会社の制度だけに頼らず、個人でも使える公的支援を積極的に組み合わせることが賢明だ。
まとめ
建設業の資格取得費用が「会社負担か自己負担か」は、会社規模・職種・資格の種類によって大きく異なる。ただし、以下のポイントを押さえておけば、損をするリスクを大幅に減らせる。
- 現場で即必要な特別教育・技能講習(玉掛け・足場など)は、ほぼどの会社でも会社負担が基本
- 施工管理技士・電気工事士など上位の国家資格は、大手ほど費用支援が手厚い。中小でも交渉次第で対応してもらえるケースは多い
- 技能検定は自己負担が多いが、合格お祝い金・資格手当を活用する会社が増えている
- 費用交渉は「会社のメリット+具体的な数字」を持って、早めのタイミングで行うと通りやすい
- 会社交渉と並行して、ハローワークの教育訓練給付制度や都道府県の補助制度も積極的に活用する
資格は「自分への投資」であると同時に、会社への貢献にもつながるもの。「自分が取りたいから」ではなく「会社にとってもメリットがある」という視点で交渉に臨めば、思った以上にスムーズに費用を出してもらえることも多い。入職前の段階でも、求人票や面接で確認できる項目なので、ぜひ積極的に聞いてみてほしい。